皆さんも「辞めたい」と思うことがある?
「公立病院の看護師など約8割が辞めたいと思っている。」
(出典:NHK NEWS 「公立病院の看護師など 約8割“職場 辞めたい” 労働組合の調査」より)
そんな話を聞いたことがありますか?
たしかに、近年の調査を見ると、「辞めたい」と考えている看護師さんの割合は、高い水準にあるようです。
一方で、2022年度の看護師の離職率は11.8%。
これを知ったとき、「あれ? 思ったよりずっと少ないな」というのが、私の正直な感想でした。
かくいう私も、公立病院で長く看護師として働いていたころ、「もう辞めたい」と心の中で(ときには実際に声に出して)叫んだことは、一度や二度ではありません。
数えきれないくらいです。
でもそのたびに、いろいろな理由をつけて、結局は仕事を続けることを選んでいました。
この記事では、そんな私の体験談をふり返りながら、多くの看護師さんがかかえる「辞めたいけど、辞められない」という葛藤(かっとう)の正体を探ってみたいと思います。
そしてその葛藤を乗りこえた先に見えた景色と、あなたが新しい一歩をふみだすためのヒントをお伝えできれば、うれしいです。
なぜ「辞めたい」のに、辞められなかったのか?
私が「辞めたい」と思いながらも、なかなか行動にうつせなかった理由。
それは、一つではありませんでした。
おそらく、あなたにも当てはまるものがあるのではないでしょうか。
人間関係を作りなおすのが、面倒だった
新しい職場に行って、また一から人間関係をきずくこと。
それを考えると、正直、気が重くなっていました。
お金の心配があった
私が住んでいた地域には、公立病院は一つだけでした。
クリニックや介護施設なども調べてみましたが、お給料(年収)は下がってしまう可能性が高かったんです。
当時は、かなりお金の心配にしばられていたなぁ、と感じます。
キャリアがなくなるのが、怖かった
長く勤めていたので、いつのまにか中堅という立場になっていました。
特にキャリアアップに強い興味があったわけではないのですが、それでも、これまで積み上げてきたものがゼロになってしまうような喪失感(そうしつかん)がありました。
急性期の病院で身につけた専門的なスキルや知識が、他の職場ではあまり役に立たないのでは…という不安もありましたね。
同僚への申し訳なさ(倫理的なジレンマ)
ただでさえ人手が足りなくて、みんな必死で働いている。
そんな中で自分が辞めてしまったら、残された同僚たちの負担がさらに増えてしまう…。
そう考えると、なんだか申し訳ない気持ちになって、言い出せませんでした。
世間からの目(社会的なプレッシャー)
家族や親戚、友人など、まわりの人たちからの期待も、辞めることへのハードルになっていました。
「病院で働いているなんて、すごいね」
「〇〇さんの評判、いいって聞いたよ」
なんて言われると、うれしい反面、プレッシャーにも感じていました。
「看護師」として認めてくれている人たちがいる。
その評価を失ってしまうことにも、抵抗があったんです。
変化を恐れる気持ち(現状維持バイアス)
これは、特に年齢を重ねると強くなるかもしれません。
「現状維持バイアス」という変化を避けて、今のままの状態を続けようとしてしまう心理です。
新しい環境に飛びこむことへの恐れや、行動すること自体の面倒くささがありました。
「今年はダメだったけど、来年には状況が改善するかもしれない…」そんな根拠のない希望的観測に、すがりついていた時期もありました。(結局、給料が少し上がっただけで、他のつらいことは何も変わりませんでしたが…)
考える力が落ちていた?
今ふり返ると、慢性的な疲れと夜勤による不規則な生活リズム、そして日々のストレスで、正常な判断力や思考力が、かなり鈍っていたように思います。
まるで、頭の中にいつもモヤがかかっているような感じでした。
「あと〇か月がんばればボーナスだ」
「私だけじゃない、みんなこんな感じなんだ。これが普通なんだ」…そんな風に自分に言い聞かせて、感覚がマヒしていたのかもしれません。
「辞めたい」→思い切って看護師を辞めてみたら、世界が広がった

そんな葛藤を長年かかえていた私ですが、40代になって、ついに退職を決意しました。
そして、実際に辞めてみて分かったこと。それは…
「辞めてみれば、意外となんとかなる。 そして、自分の世界が広がった。」
ということです。
具体的に、どんな変化があったかお話ししますね。
人間関係は「量より質」へ
辞めたら孤独になるかも…なんて心配していましたが、それは無用でした。
たしかに病院という大きな組織にいた頃と比べれば、日常的に関わる人の数は減りました。
でもその分、新しい出会いもたくさんありました。
そして何より、「たくさんの人と広く浅く」ではなく、「本当に大切にしたい人と、深く心地よい関係を築く」ことの大切さに気づけたんです。
お金に対する価値観が変わった
正直に言うと、収入は看護師時代よりも減りました。
でも新しいスキルを身につけることで、収入源を一つに頼らない働き方ができるようになりました。
そして、お金だけでは測れない「豊かさ」や「大切なもの」がある、という価値観の変化も大きかったです。
「自分らしさ」を取り戻せた(自己実現)
これが、私にとっては一番大きな変化でした。
「仕事が、人生のすべてじゃないんだ」と、心から実感できたことです。
退職してすぐは、「看護師ではない自分に、どんな価値があるんだろう?」と悩んだ時期もありました。
でもその時間があったからこそ、ゆっくりと自分自身と向き合うことができ、今はとても充実した毎日を送っています。
幸福度は、看護師時代より確実に上がったと断言できます。
「社会」との新しいつながり
病院という、ある意味特殊な環境から一歩外に出たことで、「社会人」としての視野が、ぐっと広がりました。たとえば、「えっ、私って40代なのに、こんな一般的なビジネスマナーも知らなかったの!?」と赤面するような経験もしました(笑)。
病院では「接遇研修」はたくさんありましたが、一般的なビジネスの世界とは少し違いますよね。
でもそうした新しい知識や常識を学べたことは、私の人生にとって大きな財産になっています。
「成長」を実感できる喜び
私は今、Web関係の仕事に挑戦しています。
この世界の面白いところは、自分の努力や成果が評価に直結することです。
病院で働いていた頃は、正直、「がんばっている人ほど、損をしてしまう…」と感じる場面も少なくありませんでした。
がんばらない人の分まで、仕事を背負わされたり…。
でも今の仕事は、自分ががんばった分だけ、スキルも収入も、そしてお客様からの信頼もすべて自分に返ってきます。
そのことが、確かな「自己成長」の実感につながっています。
「時間」と「心」に、ゆとりが生まれた
以前と比べて、心にゆとりができたことを日々感じています。
理由もなくイライラしたり、焦ったりすることが、格段に減りました。
そして、「時間」の使い方も、完全に自分でコントロールできるようになったのが大きいです。
看護師時代に叩きこまれた(?)タイムマネジメント能力は、今の自由な働き方の中でも、とても役立っています。
無理のない範囲で、自分でスケジュールを組み立てられるのは本当に快適です。
もちろん、退職にはリスクがともなわないわけではありません。
でも、私個人の経験としては、退職したことで失ったものよりも、得られたものの方が、はるかに大きかったと感じています。
時間は、限られている。あなたらしい人生を、あなたの手で。
「辞めたい…。でも、やっぱり怖い…」 そう思いながらも、さまざまな理由で最初の一歩をふみだせずにいる看護師さんは、きっとたくさんいるはずです。
でも忘れないでください。
私たちの人生の時間は、無限ではありません。
限られています。
後悔しない人生を送るために、一度ほんの少しの時間でも良いので、あなた自身の心とじっくり向き合ってみませんか?
そして、もし
「やっぱり、このままじゃイヤだ」
「変わりたい」
と感じるなら、ぜひ小さなことからで良いので、行動を起こしてみてください。
自分の「ものさし」を知る
あなたにとって、本当に大切なものは何? どんな状態が「しあわせ」なのか
情報を集めて、計画してみる
どんな選択肢がある? 転職? キャリアチェンジ? まずは紙に書き出してみる
未来の自分に「投資」する
新しいスキルを学ぶ? 資格を取る? 自分の可能性を広げる行動を。
自分の「心」をケアする
ストレスをためこまない工夫は? 自分を大切にし、自信をもつ練習を。
「小さな一歩から」始めてみる
最初から完璧じゃなくてOK! まずは60点を目指す気持ちで。変化そのものを楽しんでみる。
あなたの、勇気ある一歩を、私は心から応援しています。
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